トービー森に帰る

30年ぶりに森の生活に戻れる・・・かもしれない。東京と小さな古別荘の二拠点生活。思いもよらない展開で森の家の夢が叶うか

森暮らしの家

  紅葉が素晴らしい晴天の日。隣接する車道から玄関までのアプローチに魅了され、私の気持ちは、その時ほぼ決まったように思います。物件データは、昭和60年に建築、土地246坪、建物28坪、木造2階建、2LDK増築部ありです。これまで見学した物件の中では小ぶりで、外観は白のサイディングと茶色の窓枠が基調のまあ、普通な感じです。私が何より気に入ったのは、玄関に続く短いアプローチと南側に増築されたサンルームです。アプローチはかなり昔に埋め込まれた赤茶色のブロックが積もった葉の底から微かにのぞいていて、使用されていない期間があるのに、前のオーナーの方がしっかり手入れがされている様子が伝わってきました。サンルームは茶色の柱に囲まれた3面ガラス張りの約16平米。暗めのテラコッタ調のタイル貼りで、予想外のことに薪ストーブがついていました。f:id:tou-bee:20201125053201j:image

 このサンルームに入った時、二十代の頃憧れた、作家の田渕義雄さんのご自宅にあるサンルームを思い出しました。田渕さんは今年の1月にお亡くなりになったのですが、そのことを知った8月に、昔よく読んでいた「森暮らしの家」(小学館)を探し出して久々に読み直していたところでした。清里にほど近い金峰山の北麓に居をかまえ、当時の私には新鮮だったエコロジストとして、薪ストーブのある森の暮らしを力強くそしておしゃれに伝えてくれました。この本の記憶が残っていたところでこの物件に出会えたのは、私にとってはとても幸せな出来事でした。薪ストーブを愛した田渕さんの著作も読んでいましたの、なおさらストーブがあるのは驚きでした。憧れの田渕さんの亡くなった年に、森暮らしを始めることになるとは。

 著作「森暮らしの家」のプロローグで田渕さんはこの本について『これは、この雑木林の片隅でジジイになっていった男の、家と庭をめぐる物語です』と綴っています。若いころの私は、きっとこの部分を読んで寂しさを強く感じていたと思います。しかし、今この本を読み返すと「どうだ、羨ましいだろう」と全てをやり切った男の声が聞こえてくるように思えました。私もできることなら、新しく見つけた森の中でジジイになっていきたと感じています。明日はいよいよ契約となります。コロナが猛威をふるい始めたこともあり、直行・契約・帰宅したいと思います。